川越富洲原教室 教室長代理(進路アドバイザー)です。
今回の進路コラムは、地域系学部での学びを特集します。
国の方針に「地方創生」というのがあります。大学もこの方針に合わせて様々な取り組みを始めています。
その一例として、地域系学部が設けられ、主体的に学び、地域活性化に貢献できる人材育成が進められています。
(1)地域系学部の新設
2013年に国が「国立大学改革プラン」の中で、「地域活性化の中核拠点」としていくつかの大学を位置づけた。
2015年には、高知大学に「地域協働学部」が、新設された。
2016年には、福井大学、静岡大学、宮崎大学、宇都宮大学、愛媛大学、佐賀大学など、複数の大学で地域系の学部が新設された。
私立大学でも、大正大学「地域創生学部」などが新設されている。
ちなみに、愛知大学(豊橋キャンパス)には、2011年から、「地域政策学部」が設置されており、2016年にカリキュラムが改訂されている。
(2)地域系学部の学び
各大学で、特色を出そうとされていますが、おおむね共通していると言えそうなのが、県内の自治体や企業と連携して実習を行うことにより、地域の産業振興や地域活性化を担う人材育成を目指している。
静岡大学の「地域創造学環」などのような学部横断型のプログラムを設けている大学もある。
※地域系学部といっても、大学により、主要な学習内容〔文部科学省への届出内容〕が多少異なる場合があるので、カリキュラムや教員の専門内容を確かめておくほうがいいでしょう。
(3)今後の課題
各地域の課題を見つけて解決していく実習をすすめていき、地域の課題に興味・関心を持てても、県内での就職までつなげられるかや、企業とのマッチングをさせられるかが課題としてあげられている。
就職に苦労するような学部になってしまっては、学部の存続にも関わる問題になるので、地域や地元企業との密度の濃い連携がカギになりそうだ。
大学には、県外出身の学生も多くいるため、地元に帰って就職する場合も多くある。だから、大学の思惑と一致しない場合もある。
(4)大学における取組の例
①高知大学 地域協働学部
高知県内の自治体や企業と連携する形で徹底した実習などが行われ、産業振興や地域活性化を担う人材育成を目指している。
②福井大学 国際地域学部
グローバル社会のなかで、地方創生に役立つ人材の育成を目的とした学部である。
1年次から3年次の中心科目に位置付けているのが、地域の企業や自治体から実情や課題を聞き取って解決策などを提案する問題発見解決型学習(PBL:プロジェクト・ベースド・ラーニング)だ。
医学部や教育学部と異なり、資格取得を目的としていないのでカリキュラムを柔軟に組むことができ、平日にまとまった時間をとることが可能である。
この学部は、文理融合型やグローバル化も視野に入れており、学びの質にこだわっている。
それは、もともと教育学部のいわゆる0免課程を再編して創設されたことにより、文系志向の学生が多いが、福井県は繊維、眼鏡、機械といった製造業が中心で、企業は、主に技術的知識のある理系志向の学生が求められているからである。
大学は、文系の学生を企業のニーズにマッチングさせていくことに尽力している。
③宮崎大学 地域資源創成学部
社会・人文科学と農学・工学分野の利活用技術との文理融合によって、温暖な気候などの自然環境や農林水産業、観光スポーツ産業が盛んな土地柄を生かした産業、雇用の創出を担うマネジメント人材育成を目指している。
宮崎県は、約半数が県外で就職する。宮崎大学では、約70%が県外で就職する。この学部では、県内で就職したいと考えてもらえるようなカリキュラムを用意している。
④宇都宮大学 地域デザイン科学部
「地域の知の拠点」として、地域の課題に向き合い、解決方法を発見、実践「まちづくりのプロ」を育成することを目指している。
この学部では、毎日新聞と連携し、企業や自治体の取材をして情報発信をしたり、コミュニティーFMラジオで番組をつくったりすることも行っている。
⑤静岡大学 地域創造学環
「地域経営コース」(地域の活動やビジネス)、「地域共生コース」(地域社会)、「地域環境・防災コース」(環境問題・防災・被災地復興)、「アート&マネジメントコース」(芸術と地域社会を結ぶ)、「スポーツプロモーションコース」(スポーツの実践・スポーツ環境の整備)といった5つのコースで地域リーダーの育成をし、地域企業・公務員・教員など地域の課題に応え地域をつくる職種へ就職を目指せるようにしている。学部を超えた新しい教育プログラムである。
⑥愛知大学 地域政策学部
「公共政策コース」、「地域産業コース」、「まちづくりコース」、「地域文化コース」、「健康・スポーツコース」という5つのコースで、地域活性化のための人材育成を進めている。コース横断で学びを深めていくことができる。
国立大学のように、学部のある地元密着型ではなく、日本全体をフィールドとして教育と研究が行われている。
主な参考文献:毎日新聞